晩婚化や未婚など「様々な理由で子供ができないけど育てたい人」と「子供ができたけど育てることができない親」の間で特別養子縁組を希望し里親に子供を託し育ててもらうという制度に注目が集まっています。では特別養子縁組を希望するにはどのような資格や条件が必要なのでしょうか。実際に里親になる為に取り組んだことや里親に育ててもらった子供の気持ちもまとめてみました。
特別養子縁組とは
特別養子縁組とは児童の福祉や利益のためにある制度で、様々な事情で産みの親が育てられない状況にある場合、養子になる子供が『戸籍上も養親と親子関係』となり幸せな家庭生活が送れるようになることを目指しています。
里親を持つ子供の気持ち
特別養子縁組を考えようと思った時、実際に特別養子縁組をされた里親と子供は将来、親子関係をどのように受け止めて親子関係を築いているのでしょうか。事実を伝えるべきかどうか、その時の正直な気持ちはどのようなものなのか、その一例を紹介します。
◆特別養子縁組をした里親と子供①
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たまたま、自分が養子だと話てるのを聞いてしまい、涙が止まらなかったけど、父さんと母さんだって血がつながっていないけど仲良くくらしているし、血がつながってなくても一緒に暮らしている人はいっぱいいる。関係ないよと母が言ってくれた
お母さんがとっさに語った言葉がとても響きますね!里親となりお母さんとなってからきっと自分にそう言い聞かせながら一生懸命子育てをされていたのでしょうね。子供の気持ちももちろん大切ですが、まずは自分がどう受けとめ育てるかも大切なのだと伝わるエピソードでした。
◆特別養子縁組をした里親と子供②
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反抗期に知らされた時は素直になれなかったけど、大人になって他人の子なのに見放さず育ててくれた事に感謝している
反抗期は子供が大人になる途中に起こるもの、素直になるのが難しかった時期は誰にでもある事ですよね。もう子供ではない、自分で考えることができると自己主張し始めたタイミングで伝えたようですね。知った時は驚いたことでしょうが、次第に大人になるにつれて感謝にかわる様子が伝わってくるエピソードです。
◆特別養子縁組をした里親と子供③
本当の子供ではないと知った時、テンションがおかしくなって全然平気と言ってしまったけど、育ててくれて感謝してます。
里親と子供である事を伝えた時の様子が伝わってきます。動揺する気持ちを表現できずに全然平気と表現したようですね。それでも時間と共に混乱していた気持ちが感謝にかわっていったようです。里親をされている方も、ある程度の年齢になったら他人であるという事実を知ったうえで親として受け入れられたいという願望を持っているのかもしれませんね。
◆特別養子縁組をした里親と子供④
実親が突然名乗りでてきて、知らなかったから頭が真っ白になってしまった。
突然の事でビックリされたでしょうね、想定外の出来事だったのでしょうか。親であっても人間なので、手放したとしても我が子が忘れられなかったのかもしれません。どのような状況で突然名乗りでたのかはわかりませんが、一緒にいなくても子供を思う気持ちはずっと変わらなかったのかもしれませんね。
◆特別養子縁組をした里親と子供⑤
その時はビックリしたけど、血がつながってなくても仲の良い親子でいれるのは、それはそれでいいなと思った
とても自然に事実を受け止めているように感じます。前向きに考えていける大人に成長されたのでしょうね。知らせる前にしっかりとした親子関係を築けているという余裕が感じられます。特別養子縁組をしているという事実よりも、しっかりとした人間関係の構築がなにより大切なのだと考えさせられるエピソードのように思いました。
ここでは実際に特別養子縁組で里親を持つ子供たちの気持ちを紹介しました。事実を知ってしまったとしても、血のつながりより里親と子供になった時から今までの関係性がどうであったかという事が大切なのかもしれませんね。このようなエピソードから感じたことは、子育ての大変さや信頼関係の築きかたは実際の親子と何も変わらないのかもしれません。
養親になるための条件や資格
特別養子縁組は法律上、実の親と親子関係をなくして、養育する親との間に親子関係を成立させることができます。そのためさまざまな手続きを家庭裁判所が行い、審査も厳しいものとなりますが、特別養子縁組をする親子が幸せな家庭生活を送れるかというところを目指しているからでもあります。審査を通過して家庭裁判所の裁判官に特別養子縁組として認められれば成立となります。
家庭裁判所に特別養子縁組を申し立てるための主な条件は、次のとおりです
- 養親には配偶者が必要(父親、母親となるひとがいるかどうか)
- 養親は原則どちらか一人が25歳以上、もう一人が20歳以上(年齢制限)
- 戸籍上は養子や養女ではなく長男、長女と記載されることになる
- 養父、養母が共同で養育、仲が良いかなども大切なようです
- 養子希望の子どもは原則6歳未満、ただし6歳未満から養育している場合は8歳未満まで可能
- 養親は、養子を6ヶ月以上継続して養育する試験養育期間が必要
- 試験養育期間が6ヶ月以上経過するまでは家庭裁判所に申し立て後でも特別養子縁組は認められない
- 特別養子縁組が成立した後の離縁は原則的にできません(普通養子縁組ではできます)
- 養親の年収については決まりはないようです(困窮してない程度は必要)
以上が養親になるための基本的な条件ですが、実際に特別養子縁組の養親に選ばれ子育てをしている夫婦は、実際に引き取った後の生活にリアリティーを持たせるためのさまざまな取り組みをされていたようです。
里親になるために取り組んだこと
上記で紹介した制度や条件は特別養子縁組をするために必要なものですが、里親になる為には条件だけではなかなか認められないようです。選ばれる前に何度も面談や家庭訪問が繰り返され、子供を託して育てられる夫婦であるかどうかも重要な判断基準となって審査されるようです。そのため里親を希望している方はつぎのような取り組みをしていつ親になってもいいように準備と心構えをしているようです。その一部を紹介します。
- 里親の経験を持つ方の話を聞く
- 関連書籍やドラマなどで里親になった後のイメージを膨らませる
- 良い情報だけでなく、様々な情報に耳を傾ける
- 紹介者が引き取り後のサポートや相談ができる団体であるかどうかにも関心を持つ
里親になる事でなによりも大切なことはこのような経験をとおして「自分たちはどのような家庭を築きたいのか」という気持ちを固めていくことのようです。引き取った後の生活を知り、制度だけではなく気持ちの面でも親になる準備をすることで子供を手放す親や紹介者にもこの夫婦にならと思ってもらえる信頼を得ることが大切なようでした。
特別養子縁組は最近ではドラマの設定でも取り上げられるようになり、身近なテーマになりつつあります。現在日本では特別養子縁組で親になりたいと思う夫婦が増えていている一方で、育てられない親が、子供を虐待する事件も後を絶ちません。今後、認知度が広がることによって、このような親と子どちらにとっても幸せになれる選択肢が持てるようになっていくといいですね。